閖上地区「現地再建」増えて30%
名取市閖上地区の被災者に住宅再建の意向を聞いた2回目の個別面談調査(4~5月に実施)で、現地での再建を希望した人以外を対象に、市が追跡調査を行ったところ、現地での再建希望者が、追跡調査前よりも5・1ポイント増の30・3%になったと発表した。
追跡調査は6月中旬に行われ、地区外の災害公営住宅を希望した世帯(246人)、未回答と未定世帯(計509人)を対象に、第2希望などを聞いた。
この結果、市が閖上で行う区画整理地内(集団移転先を含む)に自宅を再建、災害公営住宅に入居したいと答えた世帯は、追跡前の459世帯(25・2%)から657世帯(30・3%)に増加した。
657世帯のうち、115世帯は、追跡前には整理地外の災害公営住宅の希望者で、全体の5%以上を占める。この世帯が、追跡調査により「整理地外の災害公営住宅に入れない場合は、整理地内でもいい」と回答したとして、現地再建数に組み入れた。これにより、市の試算に基づく推計人口は、約1800人となった。
追跡調査の結果は1日、市議会特別委で報告され、佐々木一十郎市長は、調査目的について、「意向確認の精度をあげ、推計人口の確実性を高めるため」と説明したが、市議からは「誘導ではないか」との質問が相次いだ。特別委終了後、佐々木市長は「市の都合ではない。最終的に被災者の方々のため、安定的に暮らせる街を作るのが、我々の考え方だ」と述べた。
また、市は、8月上旬までに整理地外の災害公営住宅の建設地の選定を終え、国や県と協議後、再度、住民説明会を実施し、10月の事業認可を目指す考えを明らかにした。
(2013年7月2日 読売新聞)
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東日本大震災:名取市閖上地区個別追跡調査 推計1806人「現地再建」 /宮城
毎日新聞 2013年07月02日 地方版
名取市は1日、 で被災した同市・閖上地区の再建について、4月から被災者に実施した個別面談の追跡調査結果を公表した。市は区域外の災害公営住宅(復興住宅)を希望した住民のうち、第2希望として区域内の復興住宅への入居を「検討できる」と答えた115件を区域内で再建する住民として計上。「推計で1806人が地区内で再建する」と説明した。
市が市議会の復興調査特別委で報告した。
追跡調査は、地区外の復興住宅への入居希望者や未回答者に実施し、全体の回答数は計2167件(96・8%)。結果は、「同区域外へ移転したい」25・4%▽「戻りたい」25%▽「既に移転」23・1%▽「区域外の復興住宅を希望」12・4%−−などだった。
調査結果では、「戻りたい」とした住民は推計で1490人にとどまる計算になるが、市は、区域外の復興住宅を希望した269件のうち、地区内の復興住宅を第2希望として検討できると回答したという115件も「現地再建数(戻りたい住民)」に計上した。国から復興交付金として土地のかさ上げ費用を受け取るには1800人の人口確保が要件となるためで、市は今回の結果を基に、10月に国や県の認可を得たいとしている。
また市は、閖上地区の高齢化率(65歳以上)が、震災前の約28%から約33%に上昇すると推計。若い世代を中心に移転を希望している現状が浮き彫りになった。【金森崇之】
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現地再建、宮城・名取市が誘導? 「内陸は希望多い」
【平間真太郎】名取市が、東日本大震災で大きな被害が出た閖上地区の住民に対し、市が進める現地再建への誘導ともとれる「電話作戦」をおこなっていたことがわかった。市は「現地再建の意思を尋ねただけ」とするが、電話の相手は内陸への移住を望む人が多かった。住民からは「市は現行計画にこだわり、住民の意向を無視している」と反発が出ている。
5月下旬、市内の仮設住宅に住む女性の電話が鳴った。相手は市職員だった。
「内陸部の災害公営住宅を望む人が多すぎて、あなたの希望通りにならないかもしれない。現地再建する閖上地区に住む考えはありませんか」
女性は「即答できない」と応じたという。4月8日から5月11日まで行われた市の意向調査で、内陸部の公営住宅を希望したばかり。女性は「津波が怖くて、安心できる内陸の住まいを望んだのに、戻らなければならなくなるのか」と、突然の電話に動揺している。
閖上に戻る意思を問う同様の電話は、意向調査で内陸部での生活再建を望んだ複数の住民にかけられていた。別の60代の女性は「閖上に戻るように誘導しているのではないか」と不信感を募らせる。
市は、朝日新聞の取材に、5月下旬から6月半ばにかけ、内陸部の公営住宅を希望した住民などに電話をかけたことを認める。「内陸部の公営住宅を望む人が多すぎる。閖上に造る公営住宅を第2希望とする考えはあるか尋ねた」と説明する。
市の計画では、閖上地区の一部、45ヘクタールを標高5メートルまでかさ上げして街を再建する。数百億円とみられる費用は、国の復興交付金頼みだ。だが、その土地に住む人口は市の推計では1700人で、交付金を受けられる基準の1800人に達しない可能性が高い。
しかも、1700人には、意向調査で市が内陸部に造る公営住宅(100戸)への入居を希望した246世帯のうち、入りきれない146世帯(市の試算で約400人)も含んでいる。このため住民の間には、「市が内陸部の公営住宅を増やそうとしないのは、内陸部へ移る人が増えて現地再建計画が破綻(はたん)するのを防ぐためではないか」といった疑念まで生まれている。
「閖上地区に戻って住む」。意向調査でそう回答したのは25%。住民から市には、現地再建だけでなく、もっと内陸部にも居住区域を設けたり、内陸部の老朽化した市営住宅を建て替えて被災者に提供したりするよう求める提案も出されている。
しかし、市がこうした声に耳を傾ける気配はない。閖上に住んでいた60代の男性は「住民の希望は意向調査ではっきりしている。それなのに、市は現行計画にこだわって、我々の意見を無視している」と憤る。
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