2013年4月26日金曜日

ふるさとの記憶をつなぐ・・・ふるさとの模型


2013年4月25日木曜日

ガバメント2.0 市民の英知が社会を変える


毎週 月-木曜 放送 総合 午後7時30分-午後7時56分 [再放送] 毎週火-金曜 総合 午前0時10分-午前0時36分(月-木曜深夜)
  • これまでの放送

これまでの放送

No.3326
2013年4月1日(月)放送
ガバメント2.0 市民の英知が社会を変える
突然の心臓発作に見舞われた男性。
そのとき、近くにいた市民のスマートフォンに緊急事態を知らせるメールが。
救急隊員に代わって応急処置に駆けつけます。
市民の力を借りた救急救命のネットワーク。
可能にしているのは、スマートフォンのアプリです。
救急救命アプリ 発案者
「市民が参加すれば、より良い行政が実現する。」
最新のテクノロジーを使って、市民に公共サービスや政策決定に参加してもらう試みが、今、世界中で広がっています。
ガバメント2.0。
市民の力を生かして効率的な行政サービスを実現させようという、新たな潮流です。
そのうねりは日本でも巻き起こっています。
財政難に悩む自治体が、公共施設のメンテナンスを市民に担ってもらおうという取り組みを始めました。
千葉市 職員
「市役所が対応し続けるのは困難。
市民にも対応していただく必要がある。」
市民の英知を結集させて社会を変える、ガバメント2.0。
その可能性を探ります。
アプリで問題解決 市民が行政を変える
アメリカ東海岸にあるフィラデルフィア市です。
市民の力を行政に生かすためのアプリを、積極的に導入しています。
アプリの開発には、職員だけでなくコンピューターの技術を持った市民も参加しています。
その一人、ミシェル・リーさん。
以前は大手IT企業に勤めていましたが、地域に貢献したいとプロジェクトへの参加を決めました。
リーさんが最初に問題だと感じたのが、市民の声を吸い上げる仕組みが少ないということでした。
ミシェル・リーさん
「市民と行政の間には、とても大きな溝があります。
行政側の人たちは市民の声を聞くことに時間を費やしていると思っていましたが、実際はそうではありませんでした。」
そこでリーさんが開発したのが、こちら。
政策を決めるとき、市民から直接意見を聞くためのアプリです。
市では再開発の計画を立てるために、このアプリを使っています。
例えば、トロリーバスの車体には「この路線で、あなたは買い物をしますか? 」という質問。
ショッピングセンターの立地を決める判断材料にします。
そして、大通りの歩道には「自転車の利用を増やすにはどうしたらいいですか? 」という質問。
回答は「自転車専用レーンを作る」や「シェアリングを始める」など6つの選択肢から選びます。
市民は看板にある電話番号にショートメッセージで回答を送ります。
「市の政策に誰もが意見を言えるのは、とても良いことですね。」
市ではこれまで、タウンミーティングを開いて市民の意見を聞いてきました。
しかし予算が限られているため頻繁に開催できず、多くの人から意見を聞くことは難しかったといいます。
再開発事業担当 クリント・ランドールさん
「集会を開かなくても、アプリで多くの意見を聞けるようになりました。
行政と市民との関係が大きく変わったのです。」
こちらは、市民からの要望や苦情を24時間受け付けるアプリです。
道路や公共施設の破損、ごみの不法投棄などの情報が写真付きで送られてきます。
その情報は、地図上にリアルタイムで表示されます。
市民に、街の見張り番を担ってもらうのがねらいです。
アプリをよく利用しているというこの女性。
自宅の近くで壁一面の落書きを見つけました。
「落書きをこのまま放っておくと、他の人がまた落書きしてしまうんです。」
早速、スマートフォンで写真を撮影し、アプリで送信。
その情報は瞬時に市役所に送られます。
市の担当者は、パソコン上で写真と詳しい住所を確認。
清掃を担当する部署に落書きを消すよう依頼しました。
そして翌日、清掃車が現場にやって来ました。
落書きは、きれいに消されました。
電話で受け付けるよりも人手も時間もかからず、行政の効率化につながっています。
「これはすごいテクノロジーよ!
いままでは電話をかけても待たされたり、たらい回しにされたけど、このアプリがあれば写真を撮って送るだけで、すべて解決するんですよ。」
このアプリが大きな威力を発揮したのは去年(2012年)、この街を大型ハリケーンが襲ったときです。
市は状況を把握しきれず、混乱をきたしていました。
このとき、市民たちがアプリで次々と情報を寄せてくれました。
「木が倒れて道が塞がれている」など地図上に表示される被害情報を頼りに、市は素早く復旧作業に当たることができました。
IT推進室 部長 ジェフ・フリードマンさん
「アプリの導入で、多くの市民が行政に参加してくれるようになりました。
それによって、より早く問題を解決できるようになり、行政の効率化につながっています。
ひとえに市民の英知のおかげです。」
ガバメント2.0 市民の英知を生かせ
IT技術を駆使して、市民の英知を行政に取り込むガバメント2.0。
そのコンセプトを提唱したのは、インターネット関連企業のCEO、ティム・オライリーさんです。
ネットの世界を知り尽くしたオライリーさんは、埋もれていた市民の英知が変革の力になりうると予見していました。
ガバメント2.0 提唱者 ティム・オライリーさん
「そもそも社会を作るのは市民です。
よりよい社会を作れるかどうかは市民の選択にかかっています。
しかし今の行政と市民との関係は、自動販売機のようなものです。
税金を入れるとサービスが出てくる。
これでは不満があっても、市民は自動販売機を揺らすくらいしかできません。
しかし最新の技術を使えば、市民は行政に声を届けることができ、行政と協力して、社会を変えることが可能になるのです。」
そのオライリーさんが注目している取り組みがあります。
カリフォルニア州などの消防署が始めた、新たな救急救命のネットワークです。
そのために開発されたアプリが、こちら。
心臓発作を起こした人がいるという情報が近くにいる市民に発信されます。
心臓発作は、発症から1分経過するごとに助かる確率が10%ずつ減っていきます。
そこで現場から半径400メートル以内にいる市民に知らせ、救急隊員が来るまでの間、専用の機械で処置をしてもらおうというのです。
このアプリは全米100の地域で使われ、5万人の市民が登録しています。
この男性は心臓マッサージの訓練を受けたことがあり、その経験を生かしたいとアプリに登録しました。
「このアプリは、社会の一員として誰かを助けたいという気持ちにさせてくれるんです。」
特別な訓練を受けていない人でも、救急車の誘導や担架での運搬など、現場では大きな力となります。
アプリが導入されて2年、これまでおよそ3,000人の市民が救命活動に参加しました。
アプリ発案者 リチャード・プライスさん
「より多くの市民が参加するようになれば、よりよい行政を実現できると思います。
政府や自治体だけで問題解決はできません。
私たちは、市民の力を引き出す仕組みを作ろうとしているのです。」
市民と行政の新たな関係
ゲスト田坂広志さん(多摩大学大学院教授)

●今のリポートをどう見たか

あのシーンに、すべてが象徴されていると思うんですね。
あの黒人の女性の方は、本当にワクワクしながら、こうやったら行政の改善ができるってことをおっしゃっていた。
この番組をご覧になっている日本の多くの方々、うちの自治体でも、あんなものが導入されたらやるよ、と思われた方は非常に多いんじゃないですかね。
これ実はインターネットの世界でも、どんどん広がっていくようなソフトなんですね。
今はアメリカ、ヨーロッパを中心にどんどん広がっていますが、まもなく日本にもどんどん入ってくると思うんですね。
非常におもしろい行政と市民の在り方、変革が始まりますね。

●市民が大きな喜びを感じるのはなぜか

これはやっぱり、今まで行政に対していろいろ言いたいことがある、注文もある、けれども世の中も複雑になり、予算も限られている。
なかなか、かゆい所に手の届く行政サービスが受けられない。
その状態の中で、こういう新しいプラットホームが生まれてきました。
まさにアプリというものを市民が作り、それを使ってこんなサービスがどんどんできるようになってきたわけですね。
実は今までインターネットの世界は、民間でどんどん進んできました。
いわゆるプロシューマーやプロデューサー=作る側と、コンシューマー=使う側が一緒になってサービスを開発するということ。
民間のレベルではどんどん進んでいたんですが、その大きな波が、いよいよ行政・政府のほうにもやってきた。
これが「ガバメント2.0」といわれるものの、大きなうねりですね。

●本来やるべきことを市民に委ねているようにも見えるが

そうご覧になった視聴者の方もいらっしゃると思うんですが、あえて申し上げると、もちろんコスト削減も効率化もできます。
でも一番大切なことは、市民の側がこういう公共サービスに取り組むことによって、非常に細やかな、われわれはこうしてもらいたいんだという、そのニーズが反映できますね。
使い勝手のいいものができる。
アプリそのものも、市民が作るということは、市民にとって使い勝手のいいものが広がっていくということですね。
この一点を、われわれは見失ってはいけない。
この大きなうねりというのは、まさに公共・行政サービスのクオリティーが上がっていくんだということ、そのことを意味していると思うんです。
ガバメント2.0を提唱した、ティム・オライリーさんが言ってますね。
そもそもこの社会を作るのは、一人一人の市民なんだと。
まさにそれが、この新しいインターネットのプラットホームで誕生してきたと、そんなおもしろい時代だと思いますね。
日本でも始まった ガバメント2.0
今年(2013年)アプリ開発に乗り出したのが、千葉市です。
市の職員とコンピューターの技術を持った市民が協力し、6月の運用開始に向けて準備を進めています。
アプリの名前は「フィックス・マイ・ストリート」。
公共施設のメンテナンスを市民の力を借りて行おうというものです。
市民に街の見回りをしてもらい、公共施設の破損を見つけたらスマートフォンで報告してもらいます。
「この段差、危ないですね。」
例えば道路の破損を見つけたとき、写真を撮ってアプリで送信。
情報は市役所に集められます。
修理はすべて市が行うのではなく、登録している市民に可能なかぎり依頼しようと考えています。
千葉市では、定年退職した人たちが施設の手入れや清掃などを時々手伝ってくれています。
そうした人たちの力を借りることで、コストをかけずにメンテナンスを行おうというのです。
千葉市 情報経営部 部長 片桐康之さん
「経済成長して、行政も潤沢に税金を投入できるっていう時代であればよかったと思いますけれども、住民の方々も公共の担い手としていろんなことができるわけなので、そういう意味では、今回の『フィックス・マイ・ストリート』で自分たちで街づくりをやっていただく。」
千葉市では、協力してくれる市民のネットワークづくりに力を入れています。
アプリ導入を担当する片桐康之さん。
この日、自治会や市民グループのメンバーに集まってもらい、協力を求めました。
千葉市 情報経営部 部長 片桐康之さん
「たとえば、公園の中の下水が詰まってました。
誰が直すべきでしょう。
全部、市が直すべきですかね。」
自治会 役員
「ある程度は、われわれが関与していかないと。
『困ってるよね、困ってるよね』と市に言っても、お忙しいですから。」
市民たちの多くは前向きな意見を寄せてくれました。
しかし協力してくれる市民がいる地区は、まだ4つほど。
これでは、千葉市全体の1割にも満たない地域しかカバーできません。
アプリの成功は、行政に協力したいという市民の意識を高められるかにかかっています。
千葉市 情報経営部 部長 片桐康之さん
「一朝一夕にできるものではないので。
少しずつ、分かる人から輪を広げていただくことが必要かな。」
一方、市の職員の間では戸惑いの声が上がっています。
この日、アプリの仕組みをほかの部署の職員に説明した片桐さん。
千葉市 情報経営部 部長 片桐康之さん
「市役所が対応し続けるのは困難だろう。
市民にも対応していただく必要がある。」
片桐さんの意見に異論が相次ぎました。
「もし万が一(市民が)修理したもので他の市民がけがした場合、責任はどう取るのか。」
「誰でも(情報を)送れると、いたずらも出てくると思う。
いたずらを防止するにはどうしたらいいのか。」
市民が参加することに対する職員の抵抗感は予想以上でした。
千葉市 情報経営部 部長 片桐康之さん
「住民にものを頼むって発想がなかったから、今までにない発想なんですね。
役人がもっと想像力を働かせて、これからの時代がどうなっていくかということを自分でイメージしていくことによって、役人も行政も、考え方の枠組みを変えていく必要があるのかなっていうふうに思っております。」
ガバメント2.0 実現への課題

●行政側の考え方について

ああいうふうにおっしゃる行政の方のお気持ちは分かるんですね。
もちろん責任感のある方がおっしゃってる。
ただ、今、世の中の大きな流れをもう一回見つめていただきたいんですね。
もう10年、20年前から、世界全体の潮流、大きな変化が起こってるんです。
公共サービスというのは官・政府とか自治体がやるものだという、今までの固定観念が世界全体で壊れていってますね。
むしろそれは民間が担うんだと、こういう大きな潮流は、この番組でも何度でも取り上げていただいている。
社会起業家という大きな流れですね。
民間が本当に知恵を使って、新しい質の高い公共サービスを担うんだと。
こういう時代において先ほどのような疑問は、むしろ市民と一緒になって、解決していくと、そういう意識の切り替えを、行政の方にはしていただきたいですね。

●市民側の意識について

これは先ほどのアメリカの黒人女性の、自分が参加することをワクワクしながら、これで自分もこの世の中をよくしていくことに参加できるんだという意識と、日本でまだ政府・行政が少し力が足りないんだったら少し手伝うかという、この意識とは少し隔たりがありますね。
日本は市民の側も、この社会を作り上げるのは、われわれ一人一人なんだという意識に切り替わる、そのことが今、求められていると思いますね。
日本の社会を見つめてみても、親和性はもともとあると思います。
私が思うに、日本人の本来の精神性というのは、非常に公共的な意識が強いですね。
例えば、働くとは、はたを楽にすることだと、こういう考え方をしますね。
よく民間企業でも『世のため、人のため』と堂々と使いますね。
そういう国民性ですから、ひとたびわれわれ一人一人がこの社会をよきものに変えていくんだと、具体的にこういったサービスにも手を出していくんだと、こう考えた瞬間に、実は古く懐かしい、日本のすばらしい何かが戻ってくるような気がしますね。

●民主主義の見つめ直し

今回のアメリカのこの動きから始まって、ガバメント2.0の動きというのは、民主主義の根本的な定義をもう一回見つめ直させようとしていますね。
われわれ民主主義というと、例えば選挙へ行こうとか、投票しようとか、政策意思決定に対して国民投票で意思を表明するとか、そういういわゆる政策決定に参加するあたりで民主主義を捉えてみると、実はそうではないんだと。
民主主義の本当の意味は、この社会の変革に参加することなんだと、この原点を実は今、教えてくれようとしているんだと思うんですね。
そしてそれが今までは理念にすぎなかったけれども、こういうアプリとか、プラットホームが生まれてくることによって実際それができる。
携帯を使って簡単にそれができる時代が始まったんだということですね。
この動きというのは、アメリカやヨーロッパ、世界各地で起きていますけれども、日本はやや遅れている。
4年前にオバマが当選したときになんと言ったか、ご存じのように『ウィー・キャン・チェンジ』ですね。
『イエス・ウィー・キャン』。
つまり、われわれ一人一人の国民がこの世の中を変えられるんだと言って、大統領になって、再選までしたわけですね。
日本はまず、政治家の意識も変わるべきだと思うんですね。
われわれに清き一票を、そうしたらこの社会を変えて見せますという、この間接的な民主主義の時代が新たな形で変わっていく。
直接的な民主主義の時代が、このインターネット革命によって始まるんだと、そのことをまず、政治家の方も行政の方もしっかり理解すべき。
同時に私たちも、この国を変えてくれるのはほかの誰でもない、われわれ一人一人の市民・国民なんだと、意識の切り替えを求められているし、この新しいネット革命がその意識の変化を後押ししてくれると思うんですね。
そうしたツールが今、着々と生まれていて、世界中に広がっている。
おもしろい革命が始まったと思いますよ。

    2013年4月24日水曜日

    ガバメント2.0 市民の英知が社会を変える

    「厳しい財政難の中、求められる公共サービスは急増する」という矛盾を世界各国が抱える中、ネットを駆使して「市民パワー」を最大限に活用し、低コストでも充実したサービスを実現させる試みが始まっている。「ガバメント2.0」と呼ばれるこの動きは、特にアメリカで活発だ。スマートフォンを使って政策決定に簡単に参加できるアプリや、公共サービスの担い手になってもらうアプリなどが次々と開発され、行政の効率化に大きく貢献している。オバマ政権もネット上で積極的に情報公開し、市民参加を促す政策を始めている。日本でも今年、一部の自治体で同様の試みが始まったが、市民の意欲をどう高めるかなど課題も多く抱えている。市民が行政に参加し、その英知を集結させて社会を変えようと言う最先端の動きを追い、今後の可能性と課題を探っていく。

    スマートフォンを使って政策決定に簡単に参加できるアプリ

    スマートフォンを使って政策決定に簡単に参加できるアプリや、公共サービスの担い手になってもらうアプリなどが次々と開発

    「厳しい財政難の中、求められる公共サービスは急増する」という矛盾を世界各国が抱える中、ネットを駆使して「市民パワー」を最大限に活用し、低コストでも充実したサービスを実現させる試みが始まっている。「ガバメント2.0」と呼ばれるこの動きは、特にアメリカで活発だ。スマートフォンを使って政策決定に簡単に参加できるアプリや、公共サービスの担い手になってもらうアプリなどが次々と開発され、行政の効率化に大きく貢献している。オバマ政権もネット上で積極的に情報公開し、市民参加を促す政策を始めている。日本でも今年、一部の自治体で同様の試みが始まったが、市民の意欲をどう高めるかなど課題も多く抱えている。市民が行政に参加し、その英知を集結させて社会を変えようと言う最先端の動きを追い、今後の可能性と課題を探っていく。